本品は二代目井倉蔵吉氏(安政5年〜大正10年)が手作りで2個製作した懐中時計の一つと言われている。製作時期は明治はじめの頃で年月は不肖であるが、明治17年1月9日付けの朝野新聞紙上に『上州の井倉蔵吉という人物が懐中時計を初めて個人で製造した。都会でもこうした技術者は少ないのに感心なことだ・・・』という記載があるので明治16年以前のものと思われる。
この懐中時計のサイズは外径5.5cm、厚さ1.5cmでズッシリとした重量感がある。縁周りは赤銅製で4箇所に小さなルビーが埋め込まれ、精密で格調高い仕上がりとなっている。時計の盤面の中には小さな穴があり、附属の鍵を指し込んでゼンマイを巻く仕掛けである。
本品は金庫の中で大切に保管されてきたが、昭和20年8月5日の空襲で隣接する土蔵が焼け崩れた影響で金庫が壊れ、熱でガラスにひびが入ってしまったという。
このほかに、この懐中時計を製作した際、二代目が歯車等の部品を作り出したと思われる古い工作機械も見ることが出来る。